低酸素・トレーニングマスクを着用して運動すれば肺活量が鍛えられるらしいけど、本当に効果あるの?という疑問を持つ人が多い。確かに、そう宣伝されてはいるものの、低酸素・トレーニングマスクを使っても肺活量に直結する筋トレ効果は非常に少ないと判断しています。そもそもの低酸素・トレーニングマスク仕組みと、なぜ効果が無いのか?理由を解説していくぞ。反論はいつでも受け入れるにゃ!
低酸素・トレーニングマスクの仕組みと得られる効果
低酸素マスクというと、こんな見た目の商品です。
どちらもAmazonの低酸素トレーニングマスクの売れ筋商品。評価件数も多く、評価も高い。→「だから肺活量トレーニングに効果がある」と断定してしまうのはNG。しっかり、低酸素マスクの仕組みと、体に及ぼす作用をチェックしてみると、なかなか怪しい。
様々な低酸素マスクの仕組みと効果を調べると共通する内容は「低酸素状態を作りだすことで、高地トレーニングと同じ効果が得られ、有酸素運動、筋トレ、肺活量の向上が見込める」というもの。検証していこう。
低酸素マスクでは高地トレーニングの効果は得られない
いきなり低酸素マスクの前提条件に噛みついてしまいますが、低酸素マスク=高地トレーニングにはなりません。
標高2,000~2,500mほどの高地は酸素濃度が非常に薄く15~16%ほどしかありません。(出典:JSPO 低酸素施設の利用(PDF))。平地の酸素濃度は21%なので、高地は約24%~29%も酸素が少ないことになります。
そのような低酸素下でトレーニングを行うと、空気中の少ない酸素を効率的に肺胞で交換しなければ、身体機能が維持できない。結果、必然的にガス交換を担っている「肺胞」が鍛えられます。肺胞が鍛えられれば、少量の空気でも、十分な酸素を取り入れることが可能になり、持久力が向上。これが高地トレーニングの1つの効果です。
他にも、血液中の赤血球やヘモグロビンの増加することで、体内の酸素保持量、運搬効率も上昇しすることによう持久力も期待できます。(関連 高地トレーニングの効果について)
では低酸素・トレーニングマスクを付けることで、高地トレーニングと同じ低酸素状態になり、肺胞が鍛えられ、赤血球やヘモグロビンが増加するのか?というとNO。
肺に取り込まれれる空気の酸素濃度は同じ
そもそも、平地でトレーニングを行っているため、酸素濃度は21%固定。いかにマスクを付け、空気の流入量を減らしたところで、酸素濃度は全く変わりません。酸素濃度が変わらないため、肺胞が”環境に適応しようと変化”することはありません。空気自体は全く同じ環境だから。
もちろん、肺胞の能力向上だけでなく、高地トレーニングで得られるような、血液中の赤血球やヘモグロビンの増加も見込めません。(関連 高地トレーニングの効果について)
そもそも高地トレーニングは日帰りで行うものではなく、1週間以上。できれば数週間滞在することで、睡眠・休憩中も低酸素化の環境に晒されることで、身体全体の機能が強化されるもの。
数時間程度、低酸素マスクを付けた所で、身体は変化しません。
そういうと、「でも低酸素・トレーニングマスクを付けると空気の流入量が少ないから息苦しさを感じるし、空気の酸素濃度は同じでも、身体は低酸素状態になるよね」
と、よく反論されます。確かにその通りです。身体は一時的に低酸素状態になります。
が、そもそも低酸素・トレーニングマスクで得られる身体の低酸素状態は無酸素運動と同じ。そして無酸素運動は酸素ではなく「糖」をエネルギーにし、身体の機能を保つ状態です。酸素の吸収量、保持量、代謝の効率化は得られません。
※参考資料 運動と生活習慣病予防~運動時の糖質利用を踏まえて~
マスクを付けることで糖質の代謝能力は高まるでしょうが、それを高めた所で持久力は向上しません。持久力を向上させるためには、脂質を代謝する筋肉中のミトコンドリアの働きを強化する必要があります。
※参考資料 カラダの中にある脂質をエネルギー源としてもっと活用し、持久力をアップしよう!
ちなみに「一度吐いた空気がマスク内に滞るため、酸素濃度は低くなっているのでは?」という反論もあります。確かに、呼気の酸素濃度は16%と言われています(関連記事:吐く息で健康をチェックする(仮訳)
でも、低酸素マスク内に滞る空気の量ってめっちゃ少なく200ccも無いレベル。成人男性の肺活量は3,500cc、女性でも2,500ccありますし、全ての呼吸を400cc程度に押さえてトレーニングすれば、確かに酸素濃度16%の200cc+外気21%の200cc=18.5%の400ccになり、低酸素状態になるものの、そもそも、絶対に呼吸を400ccに抑えられないし、先に挙げたように肺胞の変化や血液中の赤血球の増加、ヘモグロビンの増加もありません。
低酸素・トレーニングマスクで鍛えられる筋肉は吸う呼吸筋のみ
低酸素・トレーニングマスク付けることで、身体に起きる作用は「息苦しさを解消するため、呼吸の流入量を増やす」というもの。つまり、息を吸う呼吸筋が鍛えられるというもの。
息を吸う呼吸筋が鍛えられれば、ランニング中の少ない呼吸時間での空気流入量を増えることで、酸素流入量が増加し、持久力向上が見込めます。
つまり、低酸素・トレーニングマスクは呼吸筋のトレーニングアイテムということ。言ってみれば風船やペットボトルを使った肺活量トレーニングと同じようなもの。※間違っても高地トレーニングと混同しては駄目。
どのあたりの筋肉がトレーニングできるのか?については下記記事をチェックしてみて欲しい。
関連記事
【効果3倍】効率良く風船で肺活量を鍛える方法
【効果3倍】効率良くペットボトルで肺活量を鍛える方法
低酸素・トレーニングマスクで肺活量を増やすコツ
低酸素・トレーニングマスクは空気の流入の強さを調整できる仕組みが備わっています。
空気流入量を少なくすればするほど、呼吸筋への負荷が高まり、筋トレ効果が高くなります。が、ここで注意したいのが筋トレの原則。
呼吸筋を鍛えるトレーニングの原則
まず、筋肉はどのように成長するのか?というお話。
筋トレをしたことがあるは知っていると思いますが、「筋肉は伸びて、縮んでを繰り返し、傷つき修復されることで強く」なります。修復される過程で筋肉がしなやさかを増したり、大きく肥大化したり、より強い筋肉へと変貌します。
時には大きく傷つき、筋肉痛となって現れることもあります。あまり歓迎されない筋肉痛ですが、この後、超回復により筋肉が大きく鍛えられるため、我慢しましょう!。筋肉痛=正しくトレーニングできた証。
さて、「筋肉は伸びて、縮んでを繰り返し、傷つき修復されることで強く」なるのは腕の筋肉や足の筋肉だけではありません。肺活量に影響を及ぼす筋肉「横隔膜」、「肋間筋」といった呼吸筋も同じ筋肉なので同じメカニズムで鍛えることができます。
呼吸筋を伸ばし、縮ませるを繰り返せば、腕や足の筋肉と同じように強くなります。
ここで重要なポイントがなるべく大きく伸ばし、大きく収縮させるということ。小さな伸び縮みではトレーニングの効果が得られにくい。小刻みに筋肉を動かしただけでは、ただのストレッチで終わってしまいます。
効果的な筋トレの方法は調べれば多くでてきます。
全ての動画で共通する内容は2つ。
- 筋肉は早く動かすのではなく、なるべく効かせるよう適度な速さで動かす。
- 筋肉は小さく小刻みに動かすのではなく、しっかり大きく伸ばし、縮ませる。
腕立て伏せもしっかり、上げ下げしないと鍛えられません。
ダンベルを使ったトレーニングでも、少ししか上げ下げしないと筋トレ効果は薄い。
スクワットもしっかり膝を曲げ、伸ばさないと効果は薄い。
低酸素・トレーニングマスクも同じ。しっかり呼吸筋を鍛えたいなら、この2つを達成できる仕組みが必要です。
呼吸筋の筋トレ効果が倍増する低酸素・トレーニングマスクの使い方
- 筋肉は早く動かすのではなく、なるべく効かせるよう適度な速さで動かす。
- 筋肉は小さく小刻みに動かすのではなく、しっかり大きく伸ばし、縮ませる。
というトレーニングを行う為には、“呼吸の仕方”がとても重要です。
少し吸って少し吐くという呼吸では筋肉の動きも小さくため筋トレ効果が非常に小さい。※これが本記事のタイトル「低酸素・トレーニングマスクで肺活量は鍛えられない」に繋がっています。ほとんどの人は小さな呼吸の繰り返しを行っています。残念。
低酸素・トレーニングマスクの効果を最大限に高めるには、ゆっくりじっくり最大まで吸い込み、少し停止、次に呼吸筋を収縮させつつ数秒かけて息を吐く。この繰り返しが必要です。これが最も呼吸筋を鍛えることのできる呼吸法。
意識を呼吸に集中し、筋肉が大きく伸びていく様子、収縮していく様子を感じ取る。深い呼吸を繰り返し行い、呼吸筋に疲労感を感じられれば筋トレ効果が得られている証拠。
大きく息を吸って、吐いてを数回繰り返す。これがベストな使い方。
ただ、低酸素・トレーニングマスクの残念な所は、吸う呼吸筋は負荷を調整することができるものの、吐き出す負荷は全く調整できない所。
吸うときの筋肉と、吐くときの筋肉は異なるため、最大限まで心肺能力を高め、肺活量を増やしたいならどちらも鍛えられるペットボトルトレーニングの方がオススメです。
関連記事:【効果3倍】効率良くペットボトルで肺活量を鍛える方法
トレーニングしながらのマスクの着用はオススメしない。
低酸素・トレーニングマスクを装着したまま走ったり、運動したりするトレーニングを推奨している方もいます。が、私は反対の立場を取ります。
低酸素・トレーニングマスクは肺活量を増やすための筋トレアイテム。他の筋トレアイテムと併用すれば、筋トレ効果は分散します。得られる低酸素状態も高地トレーニングとは全く異なるため、高地トレーニングと同じイメージで使うのは間違っています。
原則として、筋トレは1回で全身を鍛えるのではなく、特定の部位ごとに行うのが基本。2分割なら上半身と下半身。3分割なら胸腕肩、背筋、下半身。と、いうように部位ごとに行えば、狙った筋肉に効率よく負荷を掛けることができ、超回復も特定の部位に集中できる。効率重視なら部位を分けてトレーニングするのが基本。
呼吸筋のトレーニングも筋トレの原則に従い、呼吸筋のみに負荷を掛けていくやり方を推奨したい。
そもそも、ランニングといった運動と併用すると、せっかくの有酸素運動が無酸素運動に近いトレーニング内容に変化してしまう。無酸素運動を行いたい人ならオススメできるかも・・。
低酸素・トレーニングマスクで肺活量は鍛えられない まとめ
- 高地トレーニングと同じ肺胞強化、赤血球・ヘモグロビンの増加は得られない。
- そもそも高地トレーニングは1週間近く滞在することで、身体全体の能力を厳しい環境下に適応させていくトレーニング。マスクで代替はできない。
- マスクで筋トレアイテム。呼吸筋は鍛えることは可能
- 呼吸筋を鍛えれば、少ない時間で多くの酸素が取り込めるため、持久力が上がる。
- 残念な所は、吸う呼吸筋は負荷を調整することができるものの、吐き出す負荷は全く調整できない。吸うときの筋肉と、吐くときの筋肉は異なるため、最大限まで心肺能力を高め、肺活量を増やしたいならどちらも鍛えられる方法を推奨したい。
- マスクを最大限まで活用するなら、深く吸い込み、深く吐き出すの繰り返し。
- 筋トレの原則は部位の集中。運動と併用は筋トレ効果が分散するオススメしない。
以上、「低酸素・トレーニングマスクで肺活量は鍛えられない」でした。
結論から言って、「肺活量を増やすために低酸素・トレーニングマスクって買った方が良い?」かどうか、というとオススメしません。呼吸筋を鍛え、肺活量を増やすならパワーブリーズやエアフロフィットといった専門器具が絶対におすすめにゃ。詳細は次の記事で紹介!
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